国際化する日本仏教について
 
西脇誠五郎 −パロロ本願寺住職に聞く−

日付:平成19年4月10日
「仏教文化」126号に関連記事あり
 

 西脇誠五郎 ハワイ・パロロ本願寺住職。知る人ぞ知る仏教塾八期の大先輩です。昨年米国永住権を取得し、浄土真宗の布教活動に、多忙な日々を送っています。すでに、本紙112号に寄稿していただいたこともあり、今回はできる限りそれ以外の部分にもお話を広げていけたらと考え、 インタビューをお願いし、 それを元に構成しました。

 アジア圏以外での仏教の普及度

― ハワイに限らず、アジア圏以外で、いったい仏教はどのくらい普及しているのか?日本の仏教徒や関係者にとり、いささか気になる部分であると思います。そのあたりの現状からお聞かせいただけますか。

 西脇 ハワイは周知の通り多様な民族の集合体だということは、米本土と同じです。とりわけ最近はベトナム、ラオス系などの人々も加わり、当然それぞれの宗教が存在しています。基本的にはそうした移民たちの祖宗教が根を下ろしたものと考えればいいでしょう。
 仏教も同じです。最初に日本仏教がハワイに根づいたのは、明治22年(1889)浄土真宗本願寺派で、当時の日本人移民の精神的な支えになったといいます。

― その後の発展ぶりは。

 西脇 その後、日本の各宗派が寺院を建立しましたし、最近ではいわゆる新興宗教(創価学会・生長の家・立正佼成会)なども進出しています。そこに神道も加わってハワイの宗教事情は、まさに世界の縮図といってもいいくらいでしょう。既存仏教では浄土真宗が圧倒的で東西合わせて49寺院。ついで浄土宗、真言宗、曹洞宗などとなります。ただし、信者数は公表されてませんが。

 仏教はこのように写っている

― 日系人以外の人々は仏教に関心を示してますか。

 西脇 興味を示すアメリカ人やヨーロッパ人もいるのですが、なかなか定着するところまでは行きませんね。むしろインターフェース活動が活発で、宗派を超え人間は、いかに生きるべきか、いかに幸せに生きるか、いかに平和な社会を築くか、そうした宗教の枠を越えた活動に目が向けられています。
 その中で仏教の基本理念が確かめられている、というのが私の感じる昨今のハワイの宗教事情ですね。もちろん、来るものは拒まずの精神で外国人に対して英語で布教して行かなければと思います。

― 実際に日系人以外の信徒はいるのですか。

 西脇 メンバーに中南米人が一人いてかなり熱心だったのですが、家がワイキキに移って来られなくなりました。私の娘婿は欧州系アメリカ人で会員にもなっていて、色々な行事に協力してくれてます。ハワイの仏教全般を眺めると、一般的に禅が受け入れられています。坐禅とメディテーションの関連性なんでしょうが。念仏は日本人以外の人々にはちょっと理解しがたいところがあるようです。

 最大の難点はお経の読誦

― お経はを教えるのは大変でしょう。

 西脇 これは日本語でやっていますが、テキストブックがあり、そこに漢字、平仮名、ローマ字そして英訳が併記されています。だから日本語の話せない日本人以外の人々も参加できるようになってます。日本人以外の人々だけでなく、日本語が話せない三、 四世にも活用されています。法話はもちろん英語です。
 いずれにしても、ここはアメリカですから、仏教関係の英書もそんなに多くないから、私自身が仏教書籍を英訳してるんです。月1回寺報も発行してるんです。編集に苦労はあるものの「先生、楽しく読んでますよ」などといわれると、とても嬉しいですね。ま、時間がいくらあっても足りないくらいです。

パロロ本願寺外観

― パロロ本願寺の活動状況をお話ください。

 西脇 基本的には、葬式、法事、納骨、結婚式などから病院への出張や相談ごとへの指導など、日本の寺院と同じだと思います。ただ、現在も日曜日の午前中は、日曜礼拝を実施しています。パロロ本願寺は地域社会に開かれた仏教寺院を目指してます。施設を使っての文化活動、体育活動などにも力を入れています。

― 具体的には。

 西脇 そう。柔道、ボーイスカウト、水彩画教室、英会話教室、囲碁、写経などからカラオケに至るまで、多種多様です。またホールを各種パーティーに貸して喜ばれています。

― パロロ本願寺は、 どのように維持されているのですか。

 西脇 月1回開催される理事会に諮られて決めています。 私のような開教使は、 その決定事項を実行する役割を担っているわけです。

― 最大の人気行事は何ですか。

 西脇 夏、 二晩にわたって行われる盆ダンスですね。メンバーが料理を作って販売します。それを観客が待っていてくれるんです。そうしたことも含めて、パロロ本願寺はハワイ中でも最大規模のお寺で、約2000坪あり、それを維持してゆくためにメンバーの協力は欠かせないものがあります。毎週土曜日にはメンバーが集まって、寺の内外を掃除し仏花を供えてくれるんです。
 現実的な面でいえば、年会費35ドルを納入してくれている会員が、230家族。寺報送付は300通。これはハワイの寺院の中でも多い方だと自負してます。

西脇住職を中心に門信徒の皆さん


 日本より仏教の伝統が残されている

― ハワイの通夜、 葬儀の形態は。

 西脇 これはちょっと違っていて、亡くなると僧侶が呼ばれ枕経を上げます。これは病院でも公認のサービスになっています。僧侶はご本尊、燭台、香炉を持参して枕元で読経、家族も焼香します。葬儀の方は日本と同じような形式ですが、もちろん法名も付けます。

― 枕経など、日本の都市部では消えつつある仕来りが残っているのは驚きですが、日常のスケジュールは、日本と違うところもありますか。

 西脇 原則8時から夜5時の勤務ですが、朝7時半にはお朝事を行っています。寺(事)務は全てコンピューター管理です。開教使住宅が寺の境内にあるんで、ハードな生活もできるんです…が。

― 最後に、 開教使として永住権を取られるまでのご苦労をお聞かせ下さい。

 西脇 昨年認可され、これで期限を気にせず布教活動ができるという喜びに浸ってます。 米国では3年または5年の宗教者ビザで入国しますが、長く布教活動するには、永住権取得の方法しかないんです。4年目に本山から開教使解任、帰国せよの業務命令が出ましたが、それをパロロ本願寺の理事会が反対してくれ、永住権を得られました。アメリカでは本山よりも門徒の意向が尊重されているんです。
 今年9月16日にパロロ本願寺建立45周年記念法要を厳修します。仏教塾OBの方々にご参列をお願いできたらと思っております。モイリイリ布教所として発足して今年で85年。 真宗の法灯を守り続け、いずれ立派な後継者にバトンタッチしたいと思っています。

      (文責・編集部)