仏教童話

仏教童話『牛を取られた聖火の神』

日付:2018年12月10日

194-18.jpg むかし、ある祭司しさい夫婦ふうふたまのようなおとこまれました。これをよろこんだかれらは祭壇さいだんかざって聖火せいかをともし、聖火せいかかみこころからの供養くようをささげたのでした。

 子供こども両親りょうしん愛情あいじょうつつまれてすこやかに成長せいちょうしました。かれ立派りっぱ若者わかものとなったとき父親ちちおやかれんでいました。
「おまえもすっかり一人前いちにんまえになった。将来しょうらいのことをめねばなるまい。商売しょうばいみち修行しゅぎょうみち、おまえはどちらのみちえらぶかね。」

 息子むすこんだちちけてきっぱりといました。
わたしは、商売しょうばいかねをもうけて一時いちじたのしみをむさぼるよりもいえはやしなかはい聖火せいかかみつかえてしんたのしみをもとめたいとおもいます。」

 ちち満足まんぞくげにうなずきました。
「おまえしんじるみちくがよい。私達わたしたちはおまえまれた聖火せいかをともし、今日きょうまでそのまもつづけてきた。この聖火せいかってって、これからはおまえやすことなくまもるがよい。」

 こうして息子むすこはこの聖火せいかたずさえてはやしはいり、雨露あめつゆをしのげるだけのいおりなかでこのまもってただ一人ひとり修行しゅぎょう生活せいかつはじめたのでした。

 あるかれ托鉢たくはつのためにむらあるいていると、一頭いっとううしれた老婆ろうば出会であいました。
とうといおかたよ、どうぞこのうしをおください。わたしのような年寄としよりには、このうしやしなつづけることも、十分じゅうぶんはたらかせて使つかいこなすこともできません。どうかこのいぼれの供養くようをおけください。」

 かれうしれていおりかえってきました。老婆ろうば感謝かんしゃしながら聖火せいかかって礼拝れいはいをささげました。かれ早速さっそくうし料理りょうりして聖火せいかそなえようとしましたが、しおがないのにいて、いおりまえうしつなぎ、しおるためにふたたむらかけていきました。

 その留守るすちゅうことでした。いおりまえ数人すうにん猟師りょうしとおりかかりました。 猟師りょうしたちは他人たにんのものであることなどまったける様子ようすもなく、かたなうしをさばくと、にくであぶり、あっというたいらげてしまいました。

 しばらくして、しおれたかれいおりにもどってくるとつないでおいたうし姿すがたはなく、あたりにはなまぐさいにおいがただい、うしのしっぽやあばらほねなどがらばっておりました。それをかれ事情じじょうさとりました。
聖火せいかかみよ、つないでおいたうしは、あなたさまそなえるために老婆ろうばからもらいけてきたというのに、どうしてしっかりとまもっていてくださらなかったのですか? あなたには自分じぶんのものでさえまもちからがなかったのですか...

 聖火せいかかみとおとうやまってきたかれ信仰しんこうねんは、風雨ふううにさらされたともしびのようにえていきました。かれうしのしっぽをると、聖火せいかかってげつけてさけびました。
自分じぶんのものさえまもれぬようなかみは、これで我慢がまんするがよい。」

 そしていきおいよくみずをかけ、自分じぶんうままれたときからつづけてきた聖火せいかしてしまったのでした。かれいおりなかにどっかりとこしろしつぶやきました。
「もう聖火せいかはいらぬ。これからは、わたし自分じぶん自身じしん聖火せいかとなるのだ。」

 そのかれ修行しゅぎょうつづけて神通力じんつうりきて、死後しご天界てんかいまれわったとのことです。
(ジャータカ一四四より)

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