昔、ある森(に千頭(のシカの群(れが住(んでいました。
シカの王( は年老( いて、ほとんど動( き回( ることはなく、菩提樹( の根元( に一日中( 座( ってシカたちの動( きを見守( っていました。
シカ王( は、知恵( を働( かせて猟師( や、トラや、山犬( などの敵( から上手( く群( れを守( ってきました。
この王(には子供(がおり、兄(は物静(かで、何事(もよく考(えて行(う性格(でした。
弟(は群(れの誰(よりも力(が強(く、何事(も力(で解決(しようとする性格(でした。
あるとき、王(は息子(たちを呼(んで、
「わしはすっかり年老(いたから、お前(たちにそれぞれ五百頭(の群(れを任(せよう。よく率(いてくれ」といい、息子(たちは五百頭(ずつの群(れを率(いて、森(を二分(して暮(らすことになりました。
数ヶ月(が無事(に過(ぎ、森(の近(くの穀物畑(はいっせいに黄金色(の穂(を実(らせ始(めました。
穀物(の実(るころは、シカたちにとってもっとも危険(な時期(でした。
人々(は穀物(を食(い荒(らすものを捕(らえようと、あちこちにわなを仕掛(けていました。
老(いた王(は、息子(たちを呼(び寄(せて
「いよいよ穀物(の実(る時期(がやってきた。群(れを安全(に導(くには、この時期(山(へ入(って暮(らすより他(はない。穀物(の収穫(がすんだ後(、またここへ帰(ってきなさい。」といいました。
ところが人々(は、シカたちが、山(へ上(ることも知(っており、森(から山(へいたる途中(の道(に待(ち伏(せして、シカたちを矢(で射殺(そうと狙(っていました。
力(が自慢(の弟(のシカ王(は、自分(ほどの力(があれば、たとえ人間(に見(つかっても仲間(に指一本(触(れさせはしまいと思(っていました。
そこで、移動(する時刻(など少(しも考(えず、昼間(に堂々(と群(れを率(いて山(への道(を歩(いていきました。
ところが道(のあちこちに、人々(は息(を殺(して隠(れており、シカの群(れが姿(を現(すと、まるで雨(のように矢(が飛(んできて、シカたちはばたばたと倒(れていきました。
弟(王(は助(ける余裕(などなく、命(からがら山(へ逃(げ登(っていきました。
山(の上(にたどり着(き、生(き残(ったものを数(えてみると、半分(の二百五十頭(だけでした。
一方(、思慮(深(い兄(のシカ王(は、時々(村里(へ出(かけて人間(たちの習性(を探(り、彼(らに夜眠(りに就(くという習性(があるとわかると、真夜中(を選(んで群(れを山(へ導(き、無事(にたどり着(いたのでした。
山(の中(での四ヶ月間(の生活(の後(、シカたちはまたもとの森(に戻(ることになりました。
弟(のシカ王(は夜(にこそこそ下(りるなど、王(の威厳(にかかわると思(い、人間(が帰(りまでは待(ち伏(せしまいと高(をくくっていました。
ところが森(の近(くまでやってくると、行(きの倍(の人々(が待(ち伏(せしており、二百五十頭(のシカは瞬(く間(に殺(されてしまいました。
弟(のシカ王(だけは、命(からがら森(にたどり着(きました。
一方(、兄(のシカ王(は
「収穫(が終(わった後(の人々(は暇(になっているだろうから、月(や星(の夜(なども待(ち伏(せているかもしれない。闇夜(を選(んで山(を下(りるよりほかない。」と慎重(に考(え、幾晩(も闇夜(を待(ってやっと移動(を始(めました。
五百頭(の群(れは何(の事故(もなく森(にたどり着(いたのでした。
これを迎(えた父王(は次(のようなうたを唱(えました。
徳(が厚(くて 慈愛(ある
者(に繁栄( 訪(れる
見(なさい兄(の シカ王(を
群(れに慕(われ やって来(る
(ジャータカ二四八)