昔、バーラーナシーの都(でブラフマダッタ王(が国(を治(めていた時(のことです。
王(は不正(を嫌(い、正(しく平和(に国(を治(めていました。
犯罪(もおこらず、裁判所(では係(があくびをかみ殺(しているという具合(で、ついにある日(、大臣(の一人(が王(に裁判所(の廃止(を進言(したのでした。
王(はしばらく考(え、「確(かにわが国(には裁判(にかける必要(のある者(はどこにもいないようだ。だが、王(である私(だけは誰(からも裁(かれたことがない。私(が王(であるがゆえに、誰(も私(の欠点(をあげつらおうとしないのだろう。さあ、私(への不満(があったらどんな小(さいことでもよい、正直(に申(せ。」と居並(ぶ大臣(に問(いただしました。
不満(を述(べる者(はおらず、王(は城中(を回(ってすべての家来(に問(いただしましたが、返(ってくる答(えは皆(同(じでした。
王(の気持(ちは収(まらず、城(の外(へ出(て都中(の人々(から意見(を求(めました。
しかし、王(の偉大(さを讃(える者(ばかり。
とうとう王(はみすぼらしい身(なりに変(え、御者(を一人(だけ連(れて城(を抜(け出(し、遠(い田舎(の方(まで足(をのばしていきました。
これと同(じことが隣(のコーサラ国(でも起(こっていました。
コーサラ国王(はマッリカといいましたが、善政(を行(っていたので、だれもが王(をほめたたえました。
そこで、マッリカ王(は国中(を回(り、王(を批判(するものがいないか調(べるうちに国境(近(くまで来(てしまいました。
そして、二人(の王(の馬車(がばったり出(くわしたのです。
マッリカ王(の御者(が「こらっ、道(をよけろ。」と叫(ぶと、ブラフマダッタ王(の御者(も譲(らず、両者(はにらみ合(ってしまいました。
ブラフマダッタ王(の御者(は思案(した末(、年齢(の若(い方(が年上(の王(に道(を譲(ることにしようと提案(しましたが、両王(の年齢(は全(く同(じでした。
さらに、国(の大(きさ、兵力(、財産(など思(いつくまま問(いただして比(べ合(いましたが、すべてにおいて同(じでした。
頭(を抱(えたブラフマダッタ王(の御者(はふと思(いついて「お前(の王様(の徳(はどのようなものだ。」と叫(ぶと、マッリカ王(の御者(は、うたを唱(えて答(えました。
剛(なるものには 剛(をもち
柔(なるものには 柔(をもち
善(なるものには 善(をもち
悪(には悪(にて これを討(つ
マッリカ王(の 徳(を知(れ
車(をどけて 道譲(れ
これを聞(いたブラフマダッタ王(の御者(は呆(れたように「それがお前(の王様(の徳(だというのか。それが真(の徳(なら、不徳(というものはこの世(からなくなるだろうよ。」と言(って、うたを唱(えました。
怒(りに対(して 和(をもって
悪(に対(して 善(をもち
けちに対(して 施(しをもって
うそには真実(で これを討(つ
バーラーナシーの 王(の徳(
さあ道(譲(れ そこの御者(
このうたのやりとりを聞(いていたマッリカ王(は、急(いで馬車(から降(りると恭(しく礼(をしてブラフマダッタ王(に道(を譲(ったのでした。
城(に戻(ったブラフマダッタ王(は、前(にもまして正(しく国(を治(めました。
また、マッリカ王(もおごりを捨(てて善政(を行(い、両国(は豊(かに富(み栄(えたということです。
(ジャータカ151)