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仏教童話『徳比べ』

日付:2012年1月18日 関連記事:仏教文化154号

 むかし、バーラーナシーのみやこでブラフマダッタおうくにおさめていたときのことです。

 おう不正ふせいきらい、ただしく平和へいわくにおさめていました。

 犯罪はんざいもおこらず、裁判所さいばんしょではかかりがあくびをかみころしているという具合ぐあいで、ついにある大臣だいじん一人ひとりおう裁判所さいばんしょ廃止はいし進言しんげんしたのでした。

 おうはしばらくかんがえ、「たしかにわがくにには裁判さいばんにかける必要ひつようのあるものはどこにもいないようだ。だが、おうであるわたしだけはだれからもさばかれたことがない。わたしおうであるがゆえに、だれわたし欠点けってんをあげつらおうとしないのだろう。さあ、わたしへの不満ふまんがあったらどんなちいさいことでもよい、正直しょうじきもうせ。」と居並いなら大臣だいじんいただしました。

 不満ふまんべるものはおらず、おう城中じょうちゅうまわってすべての家来けらいいただしましたが、かえってくるこたえはみなおなじでした。

 おう気持きもちはおさまらず、しろそと都中みやこじゅう人々ひとびとから意見いけんもとめました。

 しかし、おう偉大いだいさをたたえるものばかり。

 とうとうおうはみすぼらしいなりにえ、御者ぎょしゃ一人ひとりだけつれれてしろし、とお田舎いなかほうまであしをのばしていきました。

 これとおなじことがとなりのコーサラくにでもこっていました。

 コーサラ国王こくおうはマッリカといいましたが、善政ぜんせいおこなっていたので、だれもがおうをほめたたえました。

 そこで、マッリカおう国中くにじゅうまわり、おう批判ひはんするものがいないか調しらべるうちに国境こっきょうちかくまでてしまいました。

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 そして、二人ふたりおう馬車ばしゃがばったりくわしたのです。

 マッリカおう御者ぎょしゃが「こらっ、みちをよけろ。」とさけぶと、ブラフマダッタおう御者ぎょしゃゆずらず、両者りょうしゃはにらみってしまいました。

 ブラフマダッタおう御者ぎょしゃ思案しあんしたすえ年齢ねんれいわかほう年上としうえおうみちゆずることにしようと提案ていあんしましたが、両王りょうおう年齢ねんれいまったおなじでした。

 さらに、くにおおきさ、兵力へいりょく財産ざいさんなどおもいつくままいただしてくらいましたが、すべてにおいておなじでした。

 あたまかかえたブラフマダッタおう御者ぎょしゃはふとおもいついて「おまえ王様おうさまとくはどのようなものだ。」とさけぶと、マッリカおう御者ぎょしゃは、うたをとなえてこたえました。
 
 ごうなるものには ごうをもち
 じゅうなるものには じゅうをもち
 ぜんなるものには ぜんをもち
 あくにはあくにて これを
 マッリカおうの とく
 くるまをどけて 道譲みちゆず
 
 これをきいいたブラフマダッタおう御者ぎょしゃあきれたように「それがおまえ王様おうさまとくだというのか。それがしんとくなら、不徳ふとくというものはこのからなくなるだろうよ。」とって、うたをとなえました。
 
 いかりにたいして をもって
 あくたいして ぜんをもち
 けちにたいして ほどこしをもって
 うそには真実しんじつで これを
 バーラーナシーの おうとく
 さあみちゆずれ そこの御者ぎょしゃ
 
 このうたのやりとりをいていたマッリカおうは、いそいで馬車ばしゃからりるとうやうやしくれいをしてブラフマダッタおうみちゆずったのでした。

 しろもどったブラフマダッタおうは、まえにもましてただしくおうおさめました。

 また、マッリカおうもおごりをてて善政ぜんせいおこない、両国りょうこくゆたかにとみさかえたということです。
(ジャータカ151)

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