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仏教童話『無実の罪』

日付:2011年6月23日 関連記事:仏教文化151号より

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 むかし、あるむら人々ひとびとから大変たいへんうやまわれている医者いしゃがいました。医術いじゅつにすぐれているだけでなく、とてもやさしいひとだったので村人むらびとたちはだれもがかれしたっておりました。

 ところがある心臓しんぞう発作ほっさこし、その医者いしゃ突然とつぜんくなってしまいました。

 村人むらびと次々つぎつぎけつけてきましたが原因げんいんもはっきりせず、そこで様々さまざまなうわさが村中むらじゅう渦巻うずまいたのです。

 村人むらびと一人ひとりいました。「そういえば先生せんせいたおれたとき、そばに何人なんにんかの子供こどもがいたぞ」

 するとたちまちかれらが医者いしゃころしたのだろうというさわぎになってしまいました。

 弁明べんめいすることができない子供こどもたちは一人ひとりのこらず、かわひもでうししばげられてしまったのでした。

 村人むらびとたちはおう処罰しょばつ求めるべく子供こどもたちをれ、みやこかいました。

 子供こどもたちはきた心地ここちもせず、みんなあおざめ、うつむいてあるきました。

 この子供こどもたちのなかに、ひとりのかしこ少年しょうねんがおりました。

 かれだけは一向いっこうおそろしそうな様子ようすせず、いてみんなと一緒いっしょあるいていました。

 みち途中とちゅう少年しょうねんあおざめている子供こどもたちにかっていました。

 「さあ、みんな、ぼくのうことをよくいてくれ。王様おうさままえてもけっしてびくびくした様子ようすをしないように。そうすれば王様おうさまぼくたちの様子ようす不思議ふしぎおもわれて質問しつもんなさることだろう。それからあとのことはぼくまかせてくれ。」

 自信じしんちた少年しょうねん言葉ことば子供こどもたちはきをもどし、われたとおりできるだけ平静へいせいよそおったのでした。

 やがて子供こどもたちはおうまえされました。

 殺人さつじんおかしてらわれたのだからさぞかしあおざめてびくびくしているだろうとおもい、おう子供こどもたちのかお見渡みわたしました。

 しかし、なぜか子供こどもたちはみなゆったりとした様子ようす誰一人だれひとりこわがっているようにはえません。

 おう不審ふしんおもってそのわけをたずねました。

 かしこ少年しょうねんんだりりしいこえおうこたえました。
 
  うれいやなげきは 我々われわれ
  なに利益りえきも もたらさず
  むしろなげけば てきたちは
  それをていて をたたく
 
  賢者けんじゃ大事だいじな ときにこそ
  災禍さいかにあっても どうじない
  てきなるものは これを
  てがはずれて なやむでしょう
 
  読誦どくしょう呪文じゅもん 言葉ことば
  布施ふせ功徳くどくや 家柄いえがら
  苦境くきょうすくう ときもある
  それらに全力ぜんりょく くすべき
 
  しかしそれらが 役立やくだたぬ
  ときなげかず あきらめる
  今縛いましばられて ここにいる
  わたしなにが できるでしょう
 
 少年しょうねんとはおもえないかしこ言葉ことばおうはすっかり感心かんしんし、早速さっそくこの事件じけんくわしく調しらべなおさせました。

 すると医者いしゃ子供こどもたちとはなん関係かんけいもないことがはっきりしました。子供こどもたちのかわひもはすぐにほどかれました。

 おう少年しょうねんかしこさをたか評価ひょうかし、やがてかれ名誉めいよある大臣だいじんくらいさずけたということです。

(ジャータカ三六八)

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