昔、ある村(に人々(から大変(敬(われている医者(がいました。医術(にすぐれているだけでなく、とても優(しい人(だったので村人(たちは誰(もが彼(を慕(っておりました。
ところがある日(、心臓(の発作(を起(こし、その医者(は突然(亡(くなってしまいました。
村人(は次々(と駆(けつけてきましたが原因(もはっきりせず、そこで様々(なうわさが村中(に渦巻(いたのです。
村人(の一人(が言(いました。「そういえば先生(が倒(れた時(、そばに何人(かの子供(がいたぞ」
するとたちまち彼(らが医者(を殺(したのだろうという騒(ぎになってしまいました。
弁明(することができない子供(たちは一人(残(らず、革(ひもで後(ろ手(に縛(り上(げられてしまったのでした。
村人(たちは王(に処罰(を求めるべく子供(たちを引(き連(れ、都(へ向(かいました。
子供(たちは生(きた心地(もせず、みんな青(ざめ、うつむいて歩(きました。
この子供(たちの中(に、ひとりの賢(い少年(がおりました。
彼(だけは一向(に恐(ろしそうな様子(も見(せず、落(ち着(いてみんなと一緒(に歩(いていました。
道(の途中(、少年(は青(ざめている子供(たちに向(かって言(いました。
「さあ、みんな、ぼくの言(うことをよく聞(いてくれ。王様(の前(へ出(ても決(してびくびくした様子(をしないように。そうすれば王様(は僕(たちの様子(を不思議(に思(われて質問(なさることだろう。それから後(のことは僕(に任(せてくれ。」
自信(に満(ちた少年(の言葉(に子供(たちは落(ち着(きを取(り戻(し、言(われたとおりできるだけ平静(を装(ったのでした。
やがて子供(たちは王(の前(に引(き出(されました。
殺人(を犯(して捕(らわれたのだからさぞかし青(ざめてびくびくしているだろうと思(い、王(は子供(たちの顔(を見渡(しました。
しかし、なぜか子供(たちは皆(ゆったりとした様子(で誰一人(怖(がっているようには見(えません。
王(は不審(に思(ってそのわけを尋(ねました。
賢(い少年(は澄(んだりりしい声(で王(に答(えました。
憂(いや嘆(きは 我々(に
何(の利益(も もたらさず
むしろ嘆(けば 敵(たちは
それを見(ていて 手(をたたく
賢者(は大事(な 時(にこそ
災禍(にあっても 動(じない
敵(なるものは これを見(て
当(てが外(れて 悩(むでしょう
読誦(や呪文( 良(い言葉(
布施(の功徳(や 家柄(が
苦境(を救(う ときもある
それらに全力( 尽(くすべき
しかしそれらが 役立(たぬ
時(は嘆(かず あきらめる
今縛(られて ここにいる
私(に何(が できるでしょう
少年(とは思(えない賢(い言葉(に王(はすっかり感心(し、早速(この事件(を詳(しく調(べなおさせました。
すると医者(の死(と子供(たちとは何(の関係(もないことがはっきりしました。子供(たちの革(ひもはすぐにほどかれました。
王(は少年(の賢(さを高(く評価(し、やがて彼(に名誉(ある大臣(の位(を授(けたということです。
(ジャータカ三六八)