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仏教童話『キンスカの木』

日付:2010年3月16日 関連記事:「仏教文化」第143号より

 むかし、バーラーナシーのおう には四人よにん王子おうじ がいました。

 あるとき、王子おうじ たちがあつ まって、いつしかキンスカというはなし になり、だれ もキンスカという たことがなかったので、キンスカの こうと決心けっしん しました。

 四人よにん年寄としよりの御者ぎょしゃのところへ行って、

「わたしたちはキンスカのたいのだが、れて行ってせてくれないか」とたのむと、

御者ぎょしゃ

「よろしゅうございます。

でも王子様おうじさま、このくるまはわたしのほかに一人ひとりしかれません。それに、大変たいへんいそがしいので、都合つごうのつくときに一人ひとりずつおれすることにしましょう」

 とって承知しょうちしました。

 御者ぎょしゃはまず、第一だいいち王子おうじ馬車ばしゃせてもりれてきました。

 「これが、キンスカのでございます」

 はちょうど、いているときでした。

 それからすこしたって第二だいに王子おうじれてってもらうと、若葉わかばしげっておりました。

 第三だいさん王子おうじは、まるでひとてのひらのようなはなくころにせてもらいました。

 第四だいよん王子おうじがたくさんついているころにれてってもらいました。

 その四人よにんがまたあつまってキンスカの木が話題わだいがると、第一だいいち王子おうじ

 「キンスカのって、あかがきれいだぞ。まるではしらえているようだったぞ」といました。

 すると第二だいに王子おうじは、

 「いや、ニグローダのみたいに、たくさんの若葉わかばしげったおおきなだったよ」と、

 また第三だいさん王子おうじは、

 「ちがうよ、にくのかたまりみたいだよ。ひとてのひらみたいなかたちで、すこ気味きみわるかったな。」

 と反論はんろんしました。

 一方いっぽう、「そうじゃないよ。シリーサのにそっくりさ。見事みごとむすんでたし。」と第四だいよん王子おうじ

 四人よにん自分じぶん意見いけんってゆずりませんでした。

 そこで、王子おうじたちは父王ちちおうしたかけていきました。おう水浴すいよくのすんだところで、機嫌きげんよく四人よにん息子むすこむかえました。

 第一だいいち王子おうじは、

 「父上ちちうえわたしたちはみな御者ぎょしゃからキンスカのせてもらったのですが、おたがいにうことがまったちがっています。どうしてでしょう。いったいキンスカとはどのようななのですか」

いかけました。

 おうは、一人一人ひとりひとりにもう一度いちどたものをくわしく説明せつめいさせ、つぎのようにいました。

 「みなたしかにキンスカのたのだ。でも、せてもらったとき、キンスカのどんなときの姿すがたかをどうしてかなかったのだ?

 たとえば第一だいいち王子おうじは、キンスカがどういう時期じきあかがでるのか、はいつでるのか、はどこにどのようについて、いつなるのか、こういうことをひとひとつ、よくかなければならない。

 まえのものだけをかえるから、部分的ぶぶんてきなことしかわからず、キンスカについて完全かんぜん知識ちしきられないのだ。キンスカばかりではない。

 物事ものごとはみんな、あらゆる自分じぶん智恵ちえしぼって、完全かんぜんかたちでとらえなければならない。

 そして、わからないことはよくいて、自分じぶん疑問ぎもんひとひとしていくと物事ものごと本性ほんしょうがはっきりとえてくるものなのだ。」

 四人よにん王子おうじは、なるほどとこころから感心かんしんし、父王ちちおう丁寧ていねいれいをしてそのがりました。

 それからというもの、おのおの父王ちちおうおしえをむねに、たゆまず研鑽けんさんみ、すぐれたひととなったのでした。
(ジャータカ二四八)

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