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仏教童話『ハトとカラス』

日付:2010年7月15日 関連記事:「仏教文化」第145号より

 むかし、バーラーナシーのみやこ人々ひとびととりをかわいがってらしており、ある金持かねもちのいえ料理人りょうりにんとしてはたらいているおこと自分じぶん台所だいどころとりかごをひとつげていました。

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 そこにはしろいハトがいていて、夜明よあけにかごをしてはものさがしにき、日暮ひぐれになるとかえってきたのでした。

 あるのこと、そこへ一羽いちわのカラスがんできて、そっと台所だいどころなかをのぞいてみると、大好だいすきなにくさかなやまほどあり、なんとかそれをべたいものだとかがえました。

 カラスはそこのいえとりかごにハトがいているのをると、ある計画けいかくおもいつきました。

 つぎ夜明よあけに、ハトがつと、カラスはそのあとにぴったりとついていきました。

 ハトはなんとなくおかしいとおもいましたが、カラスがべつにわるいことをしたというわけでもないので、そのままにしておくことにしました。

 カラスはいつまでたってもついてきて、とうとう料理人りょうりにんいえなかまでってきました。

 料理人りょうりにんは「おやおや、うちのハトが、友達ともだちれてきたよ。それにしても、ハトとカラスの友達ともだちというのはちょっとへんだな。」とって、もうひとつかごを台所だいどころげました。

 カラスはそこでねむりました。

 つぎあさ、ハトがそとんでいくと、カラスは仕方しかたなくあとについていきました。

 途中とちゅう料理人りょうりにんいえへたくさんのにくさかなはこばれていくのがえました。

 いえもどると、にくさかなはみんな料理りょうりされて金持かねもちのいえはこばれており、なにのこってはいませんでした。
 ―明日あすはなんとかいえのこって、そいつを失敬しっけいしてやろう。

 翌朝よくあさ、カラスは、となりのかごのなかでわざとじっとしていました。

 「どうしたんだい」とハトがたずねると、「いや、どうもからだ具合ぐあいわるくてね。」とカラスははらさえながらこたえました。

 ハトはどうもあやしいとおもいながらもカラスの様子ようす、「ひょっとしてきみ、このいえのものをねらっているのではないだろうな。」とうと、「とんでもない」とカラスはくびりました。

 ハトは「へんよくたないほうがいいよ。ひどいにあうのは自分じぶんだからね。本当ほんとう病気びょうきなら、おやすみよ」とうとびだってきました。

 このもたくさんのにくさかなはこまれてきました。

 料理人りょうりにん台所だいどころくと、カラスはかごからてきました。

 そして様子ようすをうかがって、台所だいどころのなべやさらあいだあるまわりました。

 にくはいっているなべのところにまりました。

 ふたがすこしずれているので、そこにくちばしをつっこんでなかにくいついたとき、ふたがゆかうえちてものすごいおとてました。

 おときつけた料理人りょうりにんが、あわてて部屋へやはいってきました。

 「この、どろぼうガラスめ」と料理人りょうりにんは、カラスの首根くびねっこをつかまえました。そして、はねをむしって丸裸まるはだかにしてしまうと、からしにぴりぴりする調味料ちょうみりょうをたくさんぜてカラスのからだにすりつけ、かごのなかほうげました。

 夕方ゆうがたになってかえってきたハトは、かごのなかくるしんでいるカラスをつけ、「わたし忠告ちゅうこくかなかったばつだ。欲張よくばったむくいはかなら自分じぶんかえってくるのだよ。しかしこのわたしもこんなどろぼうをいえれてしまったので、このいえにとどまるわけにはいかない」とって、料理人りょうりにんいえっていきました。
(ジャータカ四二)

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