昔あるところにスジャータという少年がいました。
スジャータの父は、父親に死なれた悲しみから立ち直れず、泣いてばかりいました。
骨を庭に埋め、その上に建てた塔に花を供えては嘆き、水を供えては嘆いて泣き暮らしていました。食事ものどを通らず、何事も手につかない状態です。
そんな父の様子に、スジャータはすっかり困ってしまい、考え込んでしまいました。
ある日町外れを歩いていたスジャータが一頭の牛の死体を見つけたとき、ある考えがひらめきました。
彼は草と水を死体のそばへ持っていくと、死んだ牛に話しかけました。
「さあ、お食べ。さあ、お飲み」
これを見た人たちは、驚いて言いました。
「大変だ。スジャータは気が狂ったぞ。」
人々はスジャータの父親のもとに駆けつけると、その様子を告げました。
驚いた父親は、スジャータがいるという町外れへと急ぎました。
―スジャータの気が狂ったなんて。もしそれが本当だったらどうしよう。
そう思うと、父を亡くした悲しみはすっかり消えてしまい、心の中はスジャータのことで一杯になってしまいました。
スジャータのところへたどり着くと、彼に向かってうたを唱えました。
どうしてお前は 青草を
刈り取り束ねて 持ってきて
牛の死骸に 食え食えと
語りかけたり してるのだ
水や食べ物 与えても
死んでしまった この牛が
息吹き返す わけもなし
お前の呼びかけ 無駄なこと
スジャータはこれに答えてうたを唱えました。
牛の頭は 前のまま
足もしっぽも その耳も
生きてたときの ままにある
生き返っても 不思議じゃない
祖父の頭は もう見えず
手足も今は ここになく
それでも墓で 泣く父よ
むだはあなたの 側にある
このうたを聞いた父は、息子が悲しみにおぼれている自分の目を覚まさせようとして、こんなまねをして見せたことに気づいたのです。
この世の中の物事はみんな移り変わっていく。永遠に同じ姿でいられるものはないのだと知った父親は、息子へ感謝を込めて再びうたを唱えました。
油を注いだ 火のように
私の燃える 悲しみを
水を注いで 消すように
お前はそれを 消し去った
父をなくした この胸を
悲しみの矢が 突き刺した
お前はこの矢を こともなく
抜いて悲しみ 消し去った
悲しみ離れ 清らかに
心は澄んで 晴れ渡る
お前の言葉に 今はもう
嘆き悲しむ ことはない
智慧と慈愛を もつ人は
父を救った スジャータの
ように迷いや 悲しみを
転じて人を 救い出す