昔、バーラーナシーに
聡明な
王様がおりました。
王には
思いのままにならないことはなかったのですが、たった
一つ
悩みがありました。それは
王の
母親がたいそう
短気で
気が
強く、
荒々しい
気性をしていたことでした。
王の
母親は
朝から
晩まで
家来を
怒鳴りつけていました。
目をつり
上げて
怒鳴り
散らしている
顔は、
息子の
王から
見ても
見苦しくて
仕方のないもので、
王は
常日頃なんとかして
母親の
荒っぽい
性格を
直したいと
思っていましたが、なかなかそのきっかけがつかめません。
ある
日、
王は
母親と
一緒に
家来を
連れて
広い
庭を
散歩していました。
「ケッケケケ、ゲーッ」
突然、
思わず
耳をふさぎたくなるような
不快な
鳥の
鳴き
声が、
木の
茂みから
聞こえてきました。
「わあ、なんていやな
鳴き
声なんだろう」
その
声を
聞いた
家来たちは、
口々に
叫びながら
両手で
耳をふさぎました。
「
本当にすごい
声だこと。
一体あの
鳥はなんという
鳥かしら」
いつもなら
王の
母親はすっとん
狂な
声を
上げた
家来たちを
即座にしかりつけるはずですが、さすがにびっくりしたらしく、
目をパチクリさせ、
王に
鳥の
名を
尋ねました。
王は「ああ、あれはキキン
鳥という
鳥ですよ」
「まあ、
変わった
名前の
鳥だこと」
それから
少し
行くと、
花盛りの
木の
枝に
一羽の
鳥が
止まり、
美しい
声でさえずっておりました。
「なんて
優しく
柔らかな
声なんだろう。まるで
心にしみいるようだ。」
家来たちはその
木のそばからなかなか
動こうとしませんでした。
王の
母親もいつになく
優しい
表情でききほれておりました。
王はその
様子を
見て、ふと
思いつきました。
そうだ、
悪声のキキン
鳥と
美声のコーキラ
鳥、この
二羽の
鳥をたとえに
母上の
荒っぽい
性格を
直すことが
出来るかもしれない。
そう
考えて、
王はうたを
唱えました。
見目麗しい
美人でも
玉を
転がす
美声でも
言葉遣いの
荒いとき
鳥でも
人でも
同様に
周りの
者に
疎まれる
現に
今見た コーキラ
鳥
色が
黒くて
斑点の
醜くついた
体でも
優しい
声で
大勢の
人に
愛され
守られる
言葉優しく
賢明に
事物を
語り
心根も
穏やかな
者の
言うことは
みんなの
耳に
心地よく
事の
真理を
説きあかす
いったいこの
子は
何を
言いたいのかしら。
王の
母親はむっとした
顔で
聞いていましたが、
最後まで
聞き
終えるとぽつりとつぶやきました。
「
確かに
二羽の
鳥からは
教えられるところが
多いわね。わたしも
考え
直さなくては...」
王の
母親は
今までの
自分の
行いを
深く
恥じて、それからは
二度と
声を
荒げたりしなくなったといいます。
(ジャータカ269)