昔、ある
大きな
森の
中に、
数千羽のウズラたちが住んでいました。
その
森から
少し
離れた
村に、ウズラ
捕りの
名人といわれる
若者がいました。
彼は
毎日たくさんのウズラを
捕り、それを
都に
売りに
出かけていました。「
一体お
前さんは、
毎日あんなに
多くのウズラをどうやって
捕るんだ?」と
村人の
一人が、うらやましそうに
若者に
聞きました。
「ウズラの
仲間のふりをして、
声のまねをして
誘い
出すんだよ」と
得意げにウズラ
捕りの
秘訣を
話しました。それは、
鳴き
真似でぞろぞろと
集まってきたウズラの
上に、
上手にふんわりと
網を
投げ、ゆっくりと
引いていくという
方法でした。
ウズラの
中にも
考え
深い、
賢いウズラもおりました。
毎日、
仲間のウズラが
若者に
生け
捕りにされてしまうのを
情けなく
思っていました。
―ああ、どうしたらあの
巧妙な
手口から
逃れることができるのだろう。
一生懸命考えた
末に
自分の
力ではどうにもならないことに
気付き、
森中のウズラたちに
呼びかけて、
作戦を
提案しました。
まず、
網にかかった
時、あわてず
自分の
頭を
網の
目に
入れてしまうこと。
次に、
誰かの
合図でみんな
一緒にその
網を
持ち
上げ、そのまま
飛んでいってイバラのところへ
網を
持っていく、という
作戦でした。イバラのために
網は
地面に
張り
付かず、すきまを
急いでくぐり
抜けて
逃げることが
出来るというのでした。
「なるほど」 「それならば、みんなでやればできそうだ」
さて、
若者はウズラたちがそんな
相談をしたことなどつゆ
知らず、
森へやってきました。
例によって、
若者は
鳴きまねを
始め、
数十羽集まってきたのを
見ると、
得意の
網を
投げかけました。
若者は
自分の
目を
疑いました。いつもならそこでウズラたちは
泣き
叫び、ばたばたと
大慌てをするはずなのに、
今日はそのようなウズラもおらず、
網は
地面から
浮き
上がり、
動き
出したのです。そしてイバラの
生えている
辺りで
止まりました。
若者は、イバラの
上に
広がった
網を
手繰り
寄せようとしましたが、イバラのとげにひっかかって
動かず、やっとの
思いで
網をはずし、
中を
見ると
一羽も
見当たりませんでした。その
日、
若者は
何回も
何回も
行いましたが
結果は
同じで
一羽のウズラも
捕ることが
出来ませんでした。
翌日もその
次の
日も
若者は
森に
出かけては
手ぶらで
帰ってくるのでした。
若者の
妻はたまりかねて、
顔色を
変えて
怒りだしました。
しかし
若者は
落ち
着いた
様子で「ウズラというのはあまり
利口な
鳥じゃない。もう
少し
待ってごらん。
今はただ、おれとウズラの
根比べだ」
それから
数日後、
一羽のウズラが
虫を
捕りに
地面に
降りたとき、ちょっとした
弾みで、
仲間の
頭を
踏んでしまうと、
言い
合いになり、
本当のけんかになってしまいました。
―つまらないことにすぐカッとしてけんかをするとは
困ったものだ。あのウズラ
捕りの
網の
中で、
言い
争いが
始まったら
最後だ。
そう
思った
賢いウズラは
仲のよい
仲間と
森を
出て
行きました。
若者はその2・3
日後、もとのとおりウズラの
鳴きまねをして
網を
投げました。ウズラたちは
最初、みんなで
網を
持ち
上げようとしましたが、
網の
中でけんかが
始まりました。あのイバラのところまで
力をあわせて
網を
運ぶことなど、みんなが
忘れてしまっていました。
「お
帰りなさい。まあたくさんの
獲物だこと」と
妻は
森から
帰った
夫を
迎えたのでした。