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仏教童話『二羽のオウム』

日付:2009年7月 7日 関連記事:「仏教文化」139号より

 (むかし)、バーラーナシーの(みやこ)(ちか)くの(もり)で、猟師(りょうし)二羽(にわ)(うつく)しいオウムを(つか)まえて(おう)献上(けんじょう)しました。

 (おう)はたいそう(よろこ)んで二羽(にわ)(きん)(とり)かごに()れ、毎日(まいにち)おいしい穀物(こくもつ)(あま)砂糖水(さとうみず)(あた)えてわが()のようにかわいがりました。
仏教童話『二羽のオウム』
 しばらくして、やはり(もり)(なか)猟師(りょうし)(おお)きな(くろ)ザルを(つか)まえ、早速(さっそく)これも(おう)献上(けんじょう)したのでした。(おう)はこの(めずら)しい(くろ)ザルを一目(ひとめ)()るなりすっかり()()って、夢中(むちゅう)になってしまいました。毎日(まいにち)様々(さまざま)なご馳走(ちそう)()しげもなく(あた)えられ、(おう)のそばに(つか)える侍女(じじょ)たちもそのサルをうらやむほどでした。

 一方(いっぽう)、オウムたちはたちまち(わす)()られ、()(もの)もろくにもらえなくなりました。のどが(かわ)いても砂糖水(さとうみず)はおろかただの(みず)さえももらえず、のどの(かわ)きに(こえ)()なくなる始末(しまつ)でした。

 二羽(にわ)のオウムは兄弟(きょうだい)でしたが、(あに)のほうはじっと我慢(がまん)して不平(ふへい)ひとつ()いませんでした。ところが気性(きしょう)(はげ)しい(おとうと)はすっかり(はら)()て、(はね)(ふる)わせながらかすれた(こえ)()うのでした。

 「(にい)さん、ぼくはこんな()にあってはとてもじっとしていられないよ。さあ、こうなったら(なん)とかここを()(もり)(かえ)ろう。途中(とちゅう)危険(きけん)()にあったとしても、そのほうがまだましだよ。」

 (あに)のオウムはじっと()()じて(おとうと)のわめくのを()いていましたが、(しず)かに()(ひら)くと()()いた(こえ)でうたを(とな)えました。

   名誉(めいよ)不名誉(ふめいよ) (そん)(とく)
   称賛(しょうさん)屈辱(くつじょく) ()(らく)
   とどまることなく (おとず)れる
   世間(せけんの)(つね)に (うれ)えるな
 
 これを()いても(おとうと)はまだ(はら)(むし)(おさ)まらない様子(ようす)で、荒々(あらあら)しく()いました。

 「(にい)さんは(かしこ)いからこれから(さき)のこともよくわかるんだろう。このままじゃ、ぼくはいやだ。どうにも気持(きも)ちが(おさ)まらない。あの(にく)いサルのやつが王宮(おうきゅう)から()い払われるとでもいうなら(むね)がすっとするんだが。そうはならないのかい、(にい)さん。」

 これを()いて、(あに)のオウムはまたうたいました。

   (みみ)(ふる)わせ 尊大(そんだい)
   威張(いば)りくさって ()放題(ほうだい)
   やがてみんなを (こわ)がらせ
   (みずか)墓穴(ぼけつ)を ()るだろう

 それから数日(すうじつ)すると、この(あに)のオウムの予言(よげん)どおり(くろ)ザルはいい()になって王子(おうじ)たちの(まえ)(あば)れまわり、みんなを(おびや)かしたのでした。宮殿(きゅうでん)大騒(おおさわ)ぎになり、(おんな)子供(こども)たちの悲鳴(ひめい)(みみ)にした(おう)()けつけてきました。

 「あんな(くろ)ザルなどすぐに()(はら)ってしまえ。」

 こうして、()まぐれな(おう)命令(めいれい)(くろ)ザルは王宮(おうきゅう)(もん)から(そと)(ほう)()されてしまったのでした。

 翌朝(よくちょう)(あに)のオウムは何事(なにごと)()かったのように(しず)かな(こえ)で、(おとうと)(あさ)挨拶(あいさつ)をしました。(おとうと)もそれに(こた)えました。

 その(こえ)()きつけて、(おう)がオウムのかごに(あゆ)()ってきました。

 「いつも素直(すなお)でおとなしいお(まえ)たちのことをすっかり(わす)れていた。すまないことをした。」

 そう()うと、(おう)(はち)にすんだ(みず)を入れ、えさを()のひらに()せて二羽(にわ)のオウムの(まえ)()()しました。

 それ以後(いご)二羽(にわ)のオウムは(まえ)にも()して大事(だいじ)にされるようになったといいます。

(ジャータカ329)

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