昔、サーマ
王がバーラーナシーの
都で
国を
治めていたときのこと。
サーマ
王はパンダバという
駿馬を
飼っており、ギリダンタという
馬丁がつけられていました。
ギリダンタには
下を
向いて
歩く
癖があり、いつも
馬を
引きながら、
地べたや
草などを
見て
歩いていました。
ギリダンタがいつもこんなふうでしたから、
馬のパンダバもそれにならって
道の
行く
手は
見ずに、
長い
顔をうつむけて
道端の
石や
木の
根元ばかり
見て
歩くようになっていました。
そうするうちにパンダバは
駿足を
失ってのろまな
馬となり、きりっとした
体もいつの
間にかだらしなく
超え
太ってしまいました。
それを
見た
王の
家来が
心配して
王に
告げました。
「
王様、パンダバはきっと
病気になったのでしょう。のろのろとしか
歩けなくなり、
毛並みも
汚くなってきました。」
王はパンダバが
病気だと
聞いて
驚きました。
「
国中の
医者は
力をあわせてパンダバの
病気を
治すように」
王様の
命令を
受け、
早速幾人もの
医者がパンダバを
診に
出かけました。
やがてパンダバの
診察を
終えた
医者たちは、
口をそろえて
王に
告げました。
「
王様、パンダバは
病気ではありません。ですから
直すことも
出来ません」
「それならなぜあの
足の
速い
馬がのろまな
馬になり、
役に
立たなくなったのだ?」
王はじれったそうに
言いました。
医者たちは
顔を
見合わせて
考え
込みました。
そばにいたひとりの
大臣が
立ち
上がり、
王に
向かって
言いました。
「
王さま、それではわたしが
行ってパンダバを
見てまいります」
すると
王はほっとして
言いました。
「おお、お
前は
賢者の
誉れ
高い
大臣だ。パンダバの
様子を
調べてきてほしい」
そこで
大臣は
馬丁のギリダンタを
呼び、パンダバを
王宮の
庭へ
引いてこさせました。ギリダンタは
面白くなさげに
口をへの
字に
曲げ、うつむいたまましぶしぶ
馬を
引いてきました。
パンダバもつまらなそうな様子で下を向き、のろのろと歩いてきました。大臣はギリダンタとパンダバをじっと見比べていましたが、やがて王のもとに行ってうたを唱いました。
駿足の
馬 パンダバは
馬丁の
癖に
影響され
以前の
本性 放棄して
のろま
馬に なったのです
すると
王は
言いました。
「そうだとすれば、いったいどうしたらいいだろうか」
「
簡単なことです。
良い
馬丁に
手綱を
取らせればもとどおりになります」と
言って
大臣は
再びうたを
唱いました。
姿も
気立ても
良い人に
馬の
手綱を
取らせれば
馬はたちまち
癖を
捨て
人にならって
立ち
直る
王はギリダンタをやめさせて
別の
馬丁をつけました。するとパンダバは
元通りの
駿馬にもどり、
美しい
毛並みを
光らせて
飛ぶように
走るのでした。
王は
喜んで
大臣に
栄誉を
与えたといいます。