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仏教童話『俊足(しゅんそく)を失(うしな)った馬(うま)』

日付:2009年5月 1日 関連記事:「仏教文化」138号より

 (むかし)、サーマ(おう)がバーラーナシーの(みやこ)(くに)(おさ)めていたときのこと。

仏教童話『俊足(しゅんそく)を失(うしな)った馬(うま)』
 サーマ(おう)はパンダバという駿馬(しゅんめ)()っており、ギリダンタという馬丁(ばてい)がつけられていました。

 ギリダンタには(した)()いて(ある)(くせ)があり、いつも(うま)()きながら、()べたや(くさ)などを()(ある)いていました。

 ギリダンタがいつもこんなふうでしたから、(うま)のパンダバもそれにならって(みち)()()()ずに、(なが)(かお)をうつむけて道端(みちばた)(いし)()根元(ねもと)ばかり()(ある)くようになっていました。

 そうするうちにパンダバは駿足(しゅんそく)(うし)ってのろまな(うま)となり、きりっとした(からだ)もいつの()にかだらしなく()(ふと)ってしまいました。

 それを()(おう)家来(けらい)心配(しんぱい)して(おう)()げました。

王様(おうさま)、パンダバはきっと病気(びょうき)になったのでしょう。のろのろとしか(ある)けなくなり、毛並(けな)みも(きた)くなってきました。」

 (おう)はパンダバが病気(びょうき)だと()いて(おど)きました。

国中(くにじゅう)医者(いしゃ)(ちから)をあわせてパンダバの病気(びょうき)(なお)すように」

 王様(おうさま)命令(めいれい)()け、早速(さっそく)幾人(いくにん)もの医者(いしゃ)がパンダバを()()かけました。

 やがてパンダバの診察(しんさつ)()えた医者(いしゃ)たちは、(くち)をそろえて(おう)()げました。

王様(おうさま)、パンダバは病気(びょうき)ではありません。ですから(なお)すことも出来(でき)ません」

「それならなぜあの(あし)(はや)(うま)がのろまな(うま)になり、(やく)()たなくなったのだ?」

(おう)はじれったそうに()いました。医者(いしゃ)たちは(かお)見合(みあ)わせて(かんが)()みました。

 そばにいたひとりの大臣(だいじん)()()がり、(おう)()かって()いました。

(おう)さま、それではわたしが()ってパンダバを()てまいります」

 すると(おう)はほっとして()いました。

「おお、お(まえ)賢者(けんじゃ)(ほま)(たか)大臣(だいじん)だ。パンダバの様子(ようす)調(しら)べてきてほしい」

 そこで大臣(だいじん)馬丁(ばてい)のギリダンタを()び、パンダバを王宮(おうきゅう)(にわ)()いてこさせました。ギリダンタは面白(おもしろ)くなさげに(くち)をへの()()げ、うつむいたまましぶしぶ(うま)()いてきました。

 パンダバもつまらなそうな様子で下を向き、のろのろと歩いてきました。大臣はギリダンタとパンダバをじっと見比べていましたが、やがて王のもとに行ってうたを唱いました。

  駿足(しゅんそく)(うま) パンダバは
  馬丁(ばてい)(くせ)に 影響(えいきょう)され
  以前(いぜん)本性(ほんしょう) 放棄(ほうき)して
  のろま(うま)に なったのです

すると(おう)()いました。

「そうだとすれば、いったいどうしたらいいだろうか」

簡単(かんたん)なことです。()馬丁(ばてい)手綱(たづな)()らせればもとどおりになります」と()って大臣(だいじん)(ふたた)びうたを(うた)いました。

  姿(すがた)気立(きだ)ても ()い人に
  (うま)手綱(たづな)を ()らせれば
  (うま)はたちまち (くせ)()
  (ひと)にならって ()(なお)

 (おう)はギリダンタをやめさせて(べつ)馬丁(ばてい)をつけました。するとパンダバは元通(もとどお)りの駿馬(しゅんめ)にもどり、(うつく)しい毛並(けな)みを(ひか)らせて()ぶように(はし)るのでした。

 (おう)(よろこ)んで大臣(だいじん)栄誉(えいよ)(あた)えたといいます。

(ジャータカ184)

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