昔、ガンジス
河のほとりに
一匹の
山犬が
住んでいました。
ある
日、
獲物を
探して
歩き
回っていると
大きな
体を
横たえて
寝そべっている
一頭の
象に
出くわしました。
山犬はあわてて
森に
逃げ
込み、しばらくの
間、
遠くから
様子をうかがいました。
象が
身動き
一つしないので、もしかしたら
死んでいるのではと
恐る
恐る
象に
近づいていきました。
次第に
大胆になって、ついに
象の
顔を
間近に
見られるところまで
近づいて
前足でつついてみました。
ところが
象は
動きません。
山犬は
象が
間違いなく
死んでいることを
知り、
躍り
上がって
喜びました。
「やっと
獲物にありつけたぞ。これはたいしたごちそうだ」
そう
言いながら、すぐさま
象の
長い
鼻にかみつきました。
「ひゃあ、
硬い。」
そこで
白い
牙にかじりついてみましたが
柔らかいはずもなく、
今度は
耳をかんでみました。すると、ザルのようにざらざらしていて、
次に
腹をかもうとしましたが、まるで
歯が
立たず、
足をかじってみると、まるで
石臼のようで、
細いしっぽをかじってみても
杵のように
硬かったのでした。
「かじりつくところがないじゃないか」といらだってきた
山犬は、
象の
周りを
走り
回ってはあちらこちらかじりつきました。
最後に
山犬はしっぽのつけねに
気がつき、
一口かじってみるとその
柔らかくておいしいこと。
山犬はがつがつと
息もつかずに
周りの
肉を
食べながら、
大きくなった
穴からどんどん
象の
体の
中へ
入ってしまいました。おなか
一杯になって
眠くなると、その
場でごろりと
横になって
眠りました。
毎日おいしい
肉に
囲まれ、
食べたいだけ
食べて
暮らしているうちに、ここがすみかになっていました。
それからしばらくたったある
日のこと、
昼寝をしていた
山犬はふと
目を
覚まし、
辺りが
暗いのに
気づきました。
実は、
象の
死がいが
連日の
日照りでからからに
乾いて
縮み
始めたのでした。そして
山犬が入ってきた
穴も
日一日と
小さくなってきたのでした。
明くる
日、
穴がぴたりとふさがって、
山犬のすみかはついに
真っ
暗になってしまいました。
山犬は
慌てふためきました。
脱出しようにも
真っ
暗で、
元の
穴がどこにあるのかわかりません。
出口を
失った
山犬は、
象の
腹の
中であちらこちらにぶつかってはね
回りました。
疲れ
切った
山犬はその
場に
倒れ
込んでしまい、
生きた
心地もせず、
干からびて
狭くなってくる
象の
腹の
中で
死ぬのを
待っていました。
ところがその
夜、
久しぶりに
大雨になりました。
激しい
雨は
干からびた
象の
死がいを
一晩中たたき
続けました。
朝になって
雨はやみました。
水気をすってふくらんだ
象の
体の
中はうっすらと
明るくなりました。
穴が
開いてそこから
光がさしていたのです。
山犬は
立ち
上がり、その
光をめがけて
突進し、
外へ
飛び
出すことができたのでした。それでも
恐怖の
念から
逃れることができず、がむしゃらに
走り
続けました。
何とも
言いようのない
変な
寒さに
自分の
体を
見回すと、
毛が
一本もありません。
小さな
穴を
突き
抜けた
時に
体の
毛が
抜け
落ちてしまったのでした。
自分の
姿を
見た
山犬は
恥ずかしくなり「
自分は
何と
馬鹿だったのだろう」と
反省しました。
それ
以降この
山犬は
決して
必要以上に
獲物を
追うことをしなくなったということです。