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仏教童話 『毛(け)のなくなった山犬(やまいぬ)』

日付:2008年12月10日 関連記事:「仏教文化」136号より

仏教童話『毛(け)のなくなった山犬(やまいぬ)』
 (むかし)、ガンジス(がわ)のほとりに一匹(いっぴき)山犬(やまいぬ)()んでいました。

 ある()獲物(えもの)(さが)して(ある)(まわ)っていると(おお)きな(からだ)(よこ)たえて()そべっている一頭(いっとう)(ぞう)()くわしました。山犬(やまいぬ)はあわてて(もり)()()み、しばらくの(あいだ)(とお)くから様子(ようす)をうかがいました。

 (ぞう)身動(みうご)(ひと)つしないので、もしかしたら()んでいるのではと(おそ)(おそ)(ぞう)(ちか)づいていきました。次第(しだい)大胆(だいたん)になって、ついに(ぞう)(かお)間近(まぢか)()られるところまで(ちか)づいて前足(まえあし)でつついてみました。

 ところが(ぞう)(うご)きません。山犬(やまいぬ)(ぞう)間違(まちが)いなく()んでいることを()り、(おど)()がって(よろこ)びました。

 「やっと獲物(えもの)にありつけたぞ。これはたいしたごちそうだ」

 そう()いながら、すぐさま(ぞう)(なが)(はな)にかみつきました。

 「ひゃあ、(かた)い。」

 そこで(しろ)(きば)にかじりついてみましたが(やわ)らかいはずもなく、今度(こんど)(みみ)をかんでみました。すると、ザルのようにざらざらしていて、(つぎ)(はら)をかもうとしましたが、まるで()(たた)たず、(あし)をかじってみると、まるで石臼(いしうす)のようで、(ほそ)いしっぽをかじってみても(きね)のように(かた)かったのでした。

 「かじりつくところがないじゃないか」といらだってきた山犬(やまいぬ)は、(ぞう)(まわ)りを(はし)(まわ)ってはあちらこちらかじりつきました。

 最後(さいご)山犬(やまいぬ)はしっぽのつけねに()がつき、一口(ひとくち)かじってみるとその(やわ)らかくておいしいこと。山犬(やまいぬ)はがつがつと(いき)もつかずに(まわ)りの(にく)()べながら、(おお)きくなった(あな)からどんどん(ぞう)(からだ)(なか)()ってしまいました。おなか一杯(いっぱい)になって(ねむ)くなると、その()でごろりと(よこ)になって(ねむ)りました。毎日(まいにち)おいしい(にく)(かこ)まれ、()べたいだけ()べて()らしているうちに、ここがすみかになっていました。

 それからしばらくたったある()のこと、昼寝(ひるね)をしていた山犬(やまいぬ)はふと()()まし、(あた)りが(くら)いのに()づきました。

 (じつ)は、(ぞう)()がいが連日(れんじつ)日照(ひで)りでからからに(かわ)いて(ちぢ)(はじ)めたのでした。そして山犬(やまいぬ)が入ってきた(あな)日一日(ひいちにち)(ちい)さくなってきたのでした。

 ()くる()(あな)がぴたりとふさがって、山犬(やまいぬ)のすみかはついに()(くら)になってしまいました。

 山犬(やまいぬ)(あわ)てふためきました。脱出(だっしゅつ)しようにも()(くら)で、(もと)(あな)がどこにあるのかわかりません。出口(でぐち)(うしな)った山犬(やまいぬ)は、(ぞう)(はら)(なか)であちらこちらにぶつかってはね(まわ)りました。(つか)()った山犬(やまいぬ)はその()(たお)()んでしまい、()きた心地(ここち)もせず、()からびて(せま)くなってくる(ぞう)(はら)(なか)()ぬのを()っていました。

 ところがその(よる)(ひさ)しぶりに大雨(おおあめ)になりました。(はげ)しい(あめ)()からびた(ぞう)()がいを一晩中(ひとばんじゅう)たたき(つづ)けました。

 (あさ)になって(あめ)はやみました。水気(みずけ)をすってふくらんだ(ぞう)(からだ)(なか)はうっすらと(あか)るくなりました。(あな)(ひら)いてそこから(ひかり)がさしていたのです。

 山犬(やまいぬ)()()がり、その(ひかり)をめがけて突進(とっしん)し、(そと)()()すことができたのでした。それでも恐怖(きょうふ)(ねん)から(のが)れることができず、がむしゃらに(はし)(つづ)けました。

 (なん)とも()いようのない(へん)(さむ)さに自分(じぶん)(からだ)見回(みまわ)すと、()一本(いっぽん)もありません。(ちい)さな(あな)()()けた(とき)(からだ)()()()ちてしまったのでした。自分(じぶん)姿(すがた)()山犬(やまいぬ)()ずかしくなり「自分(じぶん)(なん)馬鹿(ばか)だったのだろう」と反省(はんせい)しました。

 それ以降(いこう)この山犬(やまいぬ)(けっ)して必要(ひつよう)以上(いじょう)獲物(えもの)()うことをしなくなったということです。

(ジャータカ148)

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